10月2日に秋期国会が開会しました。9月1日の新学期とは一歩違った大人の新シーズンが始まるわけですが、以下今学期の注目テーマに着目してみたいと思います。

今期の本題はやっぱり憲法です。モンゴルでは、国会と大統領の両方を国民投票によって選ぶ双頭制度の良し悪しについて長年議論されてきました。国際的に、両方を国民から選ぶ国はそう多くありません。議会制民主主義を採用している国々は、君主制でも共和制でも象徴的な国家代表を置いているのが大半です。歴史的に、1924年にモンゴル国の第1回目の憲法が制定されています。それと1940年、1960年の憲法が共産主義に基づく現代化の基礎となりました。その意味で、1992年の憲法は、モンゴル初の民主的な憲法です。その創始者といわれるB.チミッド氏(法学者、モンゴル国の労働英雄賞受賞者)の当初からの趣旨について、初歩的なモンゴルの民主主義において国会、政府、大統領のどれも力強くならないように国家権限を分配したという見方もあります。

ということで、その趣旨どおりに圧倒的な権力者も生み出さず、国家指導が一体誰の手にあるのかもはっかりしない約30年が経っているわけです。自分たちのやり方よりも制度そのものや相手のせいにしがちという国民性もあり、現代のモンゴルが抱える諸問題の原因はこの国家権限バランスにあるのではないかという声も上がるようになりました。

そういった中、憲法改正が期待される秋期国会がオープンしました。実際に、憲法改正法案が今期国会で審議される法案リストに含まれています。その開会式にて大統領バトトルガ氏が「ありがとう、現行の憲法!」と言い切ったのが議論の的となりました。バトトルガ氏によると、現在のモンゴルが抱える諸問題の原因は人よりも制度にあり、従って制度変革をしなければいけないということです。大統領がその制度と変革という言葉で何を意味したのかが今期の政治においてとても重要な意味を持ちます。

モンゴルでは現職の大統領の再選可能性は1度だけ、任期は最大で8年です。今まで任期中の大統領の再選に対する利害が、大統領を国民ではなく国会から任命するような憲法改正、議会制民主主義の強化を邪魔してきたという見解もあります。逆に権力の集中、権威主義への後退を懸念する学者や市民から変革ではなくて制度改善の必要性を促すコメントも多く見られました。変革やリフォームという文言の解釈が気になるところですね。憲法改正の準備段階として約40万人からとったアンケート調査によると、チンギス・ハーンという歴史的偉人の記憶の名残が強い国民の特徴なのか、権威主義的リーダーシップを優先する人も少なくありません。

今のモンゴルは、国際・国内社会共に民主主義が前進するように、社会問題の原因を民主制度に求めるがゆえに後退しないように啓蒙活動や慎重な話し合いをしないといけない歴史的な岐路点に立たされているという風にみることができましょう。

憲法改正以外には、それに関連する大統領や政党に関する法律、そして経済関連では2019年度予算がもちろんのこと、それに投資銀行法、税法、法人税法や個人所得税法といったようにわりと基礎的な各法案を取り扱う国会が開会中です。以上、次回第1回目の「MONNICHI TODAY 2019」フォーラムでもディスカッションのテーマとしました、投資銀行法について情報をお届けします。